<2021年296杯目>
例のパトロンから指令が下った。
「”八王子カントリークラブ”のラーメンを攻略せよ!」
ただ、その後に続く彼の言葉が、私の哀しみを誘った。
「”ドレスコード”があるので、僕はお店に入れません。代わりに食べて来てください。」
※”ドレスコード”とは、その場にふさわしい身なりのこと。
”ラーメンに貴賎なし!”と思っていたが、そんなのは嘘っぱちである。
とはいっても、私だって卑しい身の上。似たようなものである。
さて、どうしたものか。
カントリークラブに到着くと、駐車場にはズラーっと並ぶ高級車の数々。
メルセデスベンツ、BMW、ロールスロイス・・・中には、フェラーリやランボルギーニの姿も。
日産の大衆車に乗っているのは、私だけである。明らかに浮いていて場違いです。
入口には第一関門、ドレスコードの案内掲示があります。
ここで動揺してはいけない。
卑しい身分を悟られないように、眼光炯々として、堂々と歩く。
フロントの視線を掻い潜り、何とか2階にあるレストランへ。
ちなみに営業時間は、今の時期だと開店から17:30まで。
さりげなく席に着くと、店員さんから思いがけない質問が来た。
「ロッカーの番号を教えて頂けますでしょうか?」
”ロッカーの・・・番号?”
(もちろん、そんなものは知らない。)
基本的にゴルフ施設のレストランなので、施設利用者ならば、どうということはない質問のはずだ。
思いがけない質問に一瞬怯みそうになった。
そのときの私と来たら、おそらく、殻を失ったヤドカリみたいな気分だったはずだ。
だが、しかし、ここで動揺する素振りを見せてはいけない。
私が魔法の言葉(極秘)を囁くと、店員さんは「失礼いたしました。」といって、メニューを持って来てくださいました。
だが・・・それを見て愕然とした。
ラーメンが載っていないのである!
店員さんに「ラーメンはないのでしょうか?」と訊くと、「ラーメンは1:30までの提供になります。」との返事。
1:30を過ぎると、軽食のメニューに変わってしまうのです。
「ラーメンが無いのなら、帰ります。」とは言えるはずもなく・・・
(高貴な人間は、そんな行動はとらない。)
メニューの中から”カツサンド”を注文しました。
そして、程なくして”カツサンド”が運ばれてきたのですが・・・
それを見ていると、とても悲しくなってしまいました。
何のために、神経をすり減らしてここまできたのか・・・
じっと瞳をとじると、なんとはなしに静かな涙が出た。
そして、私はとうとう堪え切れずに、泣き出しそうな声をあげた。
「ちがうんです!”カツサンド”は要りません。ラーメンです!ラーメンを一杯いただきたいんです!!」
そう言うと、私はわっと声をあげ、泣き出してしまった。
私の悲しみの叫びは、決壊した堤防から溢れ出す濁流のごとく続いた。
ミッション失敗・・・
そして、これは、昨日12月8日の話である。
だが、そんなことでは私の胸の奥で燃えている火は消えなかった。
そう、消えるどころか、逆に燃え盛った。
本日12月9日、快晴!リベンジの日!!
2回目の訪問ともなれば、こちらも慣れたもので、フロントに手を振りながら、意気揚々とレストランへ。
昨日は、恐怖の対象でしかなかった店員さん達も私を見ると、「リベンジですね!」とか、「今日こそラーメンですね!」と優しく声を掛けてくださいます。
人の優しさにふれて、何だか心があたたかい気持ちになりました♪
昨日は緊張のあまりに気が付きませんでしたが、なんて豪華で、ラグジュアリーな空間なのでしょう!
そして、大きく開いた窓から一望できる景色が絶景です!!
こんなところでラーメンを啜れるなんて最高です。
店員さんが、メニューを持って来てくださいましたが・・・
ありました!ラーメン!
レギュラーで「八王子ラーメン」があるのですが、それとは別に、月替わりの限定ラーメンもあります。
今月の限定は「カントリーラーメン」です。
店員さんの話では、大人気のメニューなのだそうです。
気にはなりましたが、今回は、やはり「八王子ラーメン」1,280円を頂くことに。
合わせて「半チャーハン」550円も注文しました。
しばらく待ってラーメンが運ばれてきました。
ラーメンと半チャーハン、一品料理の焼売が付いています。
ラーメンの具は、チャーシューが2枚、メンマ、味玉、海苔、ナルト、刻み玉ネギ、です。
刻み玉ネギに、スープの表面に浮かぶラード・・・まさしく八王子ラーメン!
チャーシューは、バラロールチャーシューです。
しっかりとした肉の弾力と風味が合って美味いしいです
スープを啜ってみると、お!美味しい!!
高級レストランなので、意外と言ってはおかしいのですが、想像以上に美味しいです。
昆布出汁でしょうか、微かに磯の香りがします。
食べているときは気が付きませんでしたが、スープを飲んだ後にラードの香ばしい余韻が残ります。
かなり良質の脂を使っているようです。
麺は、細麺で縮れがあります。
これといった個性はありませんが、誰が食べても絶対に美味しいと思える仕上がりになっています。
予想以上に美味しかったと店員さんに話すと、「一流の料理人が、出汁から、しっかりと作っていますから。」と自信ありげでした。
チャーハンも、海老や、玉子、ネギ、など具材がたくさん入っていて、とても美味しかったです。
食べに来られる方々が富裕層なので、提供する料理にも相当に気を使っているようでした。
事実、下手なものを出すと、舌の肥えたお客様から、すぐに怒られてしまいます。
最初は高いなと思っていた価格も、この環境の中で食べれて、このレベルの味なら十分に満足できる内容だと思います。
・・・ミッションコンプリート!
満足度:★★★★☆
店名:八王子カントリークラブ
所在地:東京都八王子市川口町2352
ジャンル:レストラン
麺:細縮れ麺
最寄駅:郊外/八王子駅
営業時間:
[4月~9月]
(通し営業)~18:00
[10月~3月]
(通し営業)~17:30
※ラストオーダーは閉店30分前
※時間帯によって提供するメニューが変わる
定休日:月曜日、年末年始
開場:1960年9月23日
駐車場:あり
禁煙・喫煙:禁煙
座席数:多数
HP:https://www.hachiojicc.co.jp/
備考:コースが見渡せる開放的な展望レストラン。当倶楽部では、四季折々の旬の食材を生かし、月替わりに新メニューをお出ししております。